実視界?見掛け視界?双眼鏡の視界や視野の種類と特徴
専門用語が多く、なにかとわかりにくい双眼鏡の世界ですが、今回は双眼鏡の視野と視界について説明しています。視界と言っても実視界や見掛け視界などいくつかに分けられてしまっているのでそれぞれがどんな意味を持っているのかや、視野角で良く聞く広角や超広角などについても解説しています。
少々複雑ですが、1つ1つ理解していけば双眼鏡を選ぶときの基準になりますので参考になさってください。
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双眼鏡の3の視界について
双眼鏡の視界には実視界、見掛け視界、1000m視界という3つの視界があります。どれも双眼鏡を覗いた時の範囲や角度を表した数値になります。
以下で、それぞれの視界について解説させていただきます。
双眼鏡の実視界とは?
〇×△AA°で表された双眼鏡のスペックのうちAA°の部分です。双眼鏡の実視界とは双眼鏡を動かさずに見ることができる範囲のことで、対物レンズの中心から測った角度です。
実視界が広ければ目標は探しやすくなりますが、倍率が上がれば狭くなり、倍率が下がれば広くなるので、倍率の違う双眼鏡同士では比較できない数値です。
双眼鏡の見掛け視界とは?
双眼鏡の見掛け視界とは、双眼鏡を覗いたときにその視野がどのくらいの角度に広がって見えるのかを表したものになります。見掛け視界が大きければ高倍率でも実視界が広くなるのでとても見やすく、迫力のある見え方になります。これは計算で表すことができますが規格によって計算方法が異なります。
旧JIS規格(JIS B7121:1993)
見掛け視界=実視界×倍率
例:実視界7.0°で8倍の双眼鏡なら見掛け視界は56°
ISO規格(14132-1:2002)および望遠鏡新JIS規格(特性 JIS B7121:2007,用語 JIS B7157:2003)
tan ω' = Γ × tan ω
見掛け視界:2ω'
実視界:2ω
倍率:Γ
例:実視界7.0°で8倍の双眼鏡なら52.1°となります。
双眼鏡の1000m視界とは?
双眼鏡を動かさずに見ることができる1000メートル先の範囲をメートルで表したものです。海外の製品で良く使われる表し方です。
例:倍率8倍で実視界7.0°の双眼鏡では122mになります。
2×1000m tan (7.0÷2)=122m
つまり、この例に出てきたスペックの双眼鏡を使えば、1000m離れた状態で122mの高さの木がぴったりと視界に収まる状態で見ることができます。
双眼鏡の視野角について
双眼鏡では視野角と言う言葉が使われややこしいですが、視界と視野角は同じ意味です。視野角の広さはプリズムに使われる硝材の屈折率の高さに関係しています。
人間の肉眼では両目で同時に見える視野が120°なので、見掛け視界がそれに近付けば近付くほど臨場感や迫力のある見え方を楽しむことができるのです。
視野角は見掛け視界の広さによって広角と超広角に分けられますが、この定義は先ほど見掛け視界で登場した規格によって若干変わります。
広角の双眼鏡とは?
旧JIS規格(JIS B7121:1993)では見掛け視界65°で広角、望遠鏡新JIS規格(特性 JIS B7121:2007,用語 JIS B7157:2003)では見掛け視界60°で広角となります。
広角の双眼鏡は簡単に言うと広い範囲を見るのに適しています。スポーツ観戦や観劇、動きの速い鳥のバードウォッチングなどに便利で、臨場感を楽しむことができます。
超広角の双眼鏡とは?
見掛け視界75°以上になると超広角と言います。ここまで広くなるととても迫力のある見え方をします。天体観測など空を広く見るのにおすすめの他、スポーツ観戦や観劇、バードウォッチングで広角よりもさらに広い視界が必要な時におすすめです。
双眼鏡の実視界の選び方
実視界は双眼鏡の倍率によって変化する(倍率が高ければ狭く、倍率が低ければ広くなる)ので一概には言えませんが、8倍の双眼鏡で言えば7°前後が理想的な実視界です。
例えば、30メートル先の空を鳥がゆっくり飛んでいるのを肉眼で確認した後に倍率8倍の双眼鏡で覗くとします。
- 実視界6°(見掛け視界48°)だと3回に1回は鳥を視界から外してしまうくらいの視野。
- 実視界7°(見掛け視界56°)で90%くらいの確率でとらえることができる視野。
- 実視界8°(見掛け視界64°)以上でまず外すことはないくらいの視野。
このような感じで変わります。倍率が8倍の双眼鏡で、実視界が8°だと見掛け視界は64°なのでギリギリ広角タイプに入らない値になります。つまり広角や超広角を選んでおけば目標を捉えるのには苦労しないということになりますね。
ただし、広角や超広角では周辺像が悪化しやすいので、実視界が高ければ良いというわけではありません。止まっている鳥や遺跡の細部など、点を観察するのであれば視界の広さよりも像質を優先すべきなので目的に合わせた実視界選びが大切になります。