高倍率に要注意?双眼鏡の倍率と明るさ
一般的に双眼鏡を選ぶときには高倍率の物が良いと思われることが多いですが、そうではありません。良い見え方をする双眼鏡というのは、倍率が高くなるにつれてバランスの取れた対物レンズを使う必要があります。
これを理解することでより見え方の良い双眼鏡に出会うことができます。以下では倍率について理解していただくために、オススメの倍率や倍率表示の見方、計算方法や、倍率と明るさの関係などを解説します。
スポンサーリンク
高倍率な双眼鏡がダメな理由
双眼鏡を高倍率にするためにはそれに伴って対物レンズの有効径を大きくしないと全く使い物になりません。倍率は遠くの物を大きく見るための数値ですが、対物レンズは明るさや細かい物を見分ける役割があります。このバランスが取れておらず高倍率なだけの双眼鏡は、明るさに欠け、像がぼやけ、視野が狭くなります。
ちょっとわかりにくい場合は世界規模で研究されている巨大天体望遠鏡を想像してください。遠くの宇宙を見るためには高倍率である必要がありますが、そのために対物レンズは数メートルにも及びます。もし双眼鏡レベルの対物レンズで高倍率を実現できるならあんなに大きな天体望遠鏡は世界に必要なくなるということです。
手持ちで使う双眼鏡のおすすめ倍率
手持ちの双眼鏡では10倍までがおすすめです。無理矢理倍率だけを大きくした物は論外としてお話すると、倍率を20倍30倍とした場合には対物レンズも大きくなり、それに伴って双眼鏡も大きくなります。
すると、重さで手ブレも大きくなってしまいますし、倍率が高くなると少しの手ブレも致命傷になってしまうため、手持ちには不向きです。
そもそも双眼鏡の倍率って何?
双眼鏡の倍率とは、双眼鏡を覗いたときに目標がどれだけ大きく見えるかを表しています。例えば10倍の双眼鏡とは距離を10分の1まで縮めて見えることを意味します。
双眼鏡の倍率表示の見方
双眼鏡のスペックには〇×△AA°という表記がなされています。このうち倍率は〇の部分になります。〇に10と書いてあればそれは10倍の双眼鏡です。
双眼鏡の倍率の計算方法
双眼鏡の倍率と見たい目標との距離がわかれば、その双眼鏡ではどの距離まで近付いて見えるのかを計算することができます。
見たい目標との距離÷倍率=見えている大きさの距離
例えば、100メートル先の目標を10倍の双眼鏡で覗いた場合には、
100÷10=10
となるので目標は10メートルまで近付いた大きさに見えるということになります。
双眼鏡の倍率と明るさの関係
双眼鏡の明るさは倍率と対物レンズの有効径によって決定されます。対物レンズの有効径が同じであれば倍率が高くなるにつれ暗くなっていく傾向にあり、これも計算で表すことができます。
(対物レンズの有効径÷倍率)の二乗=明るさ
5×45の場合明るさは81
8×45の場合明るさは28.1
※この倍率と対物レンズの有効径は例です。明るさ81の双眼鏡は明るすぎます。
明るさの数値は高ければより明るいので、倍率を大きくする場合には対物レンズの有効径も同時に大きくしなけれないけないのがお分かりいただけるかと思います。
ちょうど良い明るさとは?
上記の計算で明るさは数字で表すことができました。では、最適な明るさとはどのくらいなのでしょう?答えは人間の瞳孔径に依存します。人間の瞳孔は明るい所で2~3ミリ、暗い所で7ミリなので、それぞれを二乗した数字が適した明るさになります。
この計算によって欲しい倍率に適した対物レンズの有効径を割り出して最適な明るさの双眼鏡を選べるようにしましょう。
倍率を調整できるズーム双眼鏡とは?
双眼鏡の中には倍率を調整できるズーム双眼鏡という物があります。倍率は焦点距離(レンズの中心から像を結ぶ地点までの距離)によって決まるので、ズーム双眼鏡の倍率を変えるつまみを回すとレンズの位置が変わり、焦点距離が動くような仕組みになっています。
ズーム双眼鏡のデメリット
ズーム双眼鏡は倍率を自在に変えられるので、シーンによっては便利ですがデメリットもあります。
- ズームしていくと手ブレの影響も大きくなる
- ズームしていくと視野が狭くなる
- ズームしていくと暗くなる
ズームしても対物レンズの有効径は変わらないわけですから、高倍率で述べたダメな理由と同じです。ズーム双眼鏡はデメリットを理解したうえで使用するのが良いでしょう。