オペラグラスとは?種類や歴史と双眼鏡との違い
オペラグラス。インテリア的復刻双眼鏡とでも言いましょうか。どこか非日常で上品でノスタルジック。でも本当は、もっと身近でシンプル。多くの人が一度はオペラグラスを手にしたことがあるのです。
子供の頃のオモチャの双眼鏡。雑誌の付録で組み立てた簡易の双眼鏡。あれらも立派なオペラグラス。もしかしたら天体望遠鏡より顕微鏡より先に、覗いたことのある世界では!?
そんな現代では庶民的だけど、中世ヨーロッパではセレブの嗜みとして愛されたオペラグラス。その歴史や種類、双眼鏡との違い等、詳しく見てみましょう。
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そもそもオペラグラスとは?
オペラグラスとは主に観劇に適した小型の双眼鏡です。オペラハウスで使われ始めたことがその名の由来。もちろんスポーツ観戦や美術館でも使えますが、やはり主な需要は観劇のためと言ってよいでしょう。一般的な双眼鏡と比べ軽量で小さいため、長時間使っても手が疲れず、周りの人の邪魔になりません。いくら見えるからといって、無骨で大きな双眼鏡での観劇は、興ざめですものね。
カテゴリーは双眼鏡に分類されます。また双眼鏡は望遠鏡の一種。よってオペラグラスは望遠鏡の一種なのです。しかし、オペラグラスを望遠鏡と呼ぶことはありません。望遠鏡とでは構造や性能は、遠くかけ離れていますから!残念ながら、オペラグラスは非常に低倍率で視野が狭いのです。
オペラグラスと双眼鏡の違い
オペラグラスと双眼鏡の違いを簡単に言うと、以下の4つです。
- 決定的違いは「筒の中にプリズムが入っているか入っていないか」
- 用途的な違いは「観劇用かそうでないか」
- フォルム的違いは「オペラグラスは小型でお洒落」
- 料金的には「オペラグラスは構造が単純なだけに安価」
最近では上記に当てはまらないオペラグラスもありますが、それは後ほど詳しくお話しします。
相対的にオペラグラスは「性能が双眼鏡に劣る」と認識されています。それは1の「筒の中にプリズムが入っているか否か」によって、性能に随分差があるからです。
オペラグラスは基本「ガリレオ式」というレンズ構造です。これは、たった2枚のレンズで成立像を得ることができ、色収差(色のにじみやボケ)がないという素晴らしい特徴があります。また単純な構造から生産が簡単で、100均でも購入できるほど安価です。しかし倍率は2、5~4倍が限界で、野鳥観察や天体観察などには適していません。
一方双眼鏡は、使われているレンズの組み合わせがオペラグラスとは違います。そして筒の中にプリズムを搭載することで、光の反射を利用してより遠くの対象物をより鮮明に見ることができます。よって用途も幅広いのです。レンズとプリズムという複雑な技術を要するため双眼鏡の方が高価となります。
オペラグラスの歴史
1608年、オランダの眼鏡屋リッパーシェイが、凸レンズと凹レンズの組み合わせで遠くのものが大きく見えることを発見しました。望遠鏡の特許を出願するも受理されず、その単純な構造からヨーロッパ中に望遠鏡は普及し、軍事用にも生産されました。
しかし天文学者ガリレオガリレイは、イタリアのガラス工芸の技術でもって、さらに高性能な望遠鏡を発明。月のクレーターや数々の星を発見したのです。これが俗に言うガリレオ式望遠鏡です。望遠鏡の倍率は2枚のレンズの焦点距離の比で決まることを発見したのもガリレオ。しかし努力もむなしく倍率は構造上さほど上がらず、出来のよくない望遠鏡として玩具として売られてゆくのです。
そして、ガリレオ式の鏡筒を2つ平行に並べた双眼鏡が、やがてオペラグラスとして登場するのは19世紀後半。上流階級の人々の必需品であり、たしなみとなるのです。オペラハウスのボックス席から観劇するにはオペラグラスは非常に便利でした。ドレスにふさわしいお洒落で高貴なアイテムとしてその後も愛され続けていくのです。
オペラグラスの種類
オペラグラスの種類は様々。昨今ではメガネ型、ボックス型、薄く折りたためるもの、持ちやすいハンドル付き、プラスティックの簡易オペラグラス。変わり種では、サングラスに切り替えられるモノまで出てきました。
基本は双眼鏡のように二つの鏡筒を並べたモノですが、単眼鏡のオペラグラスも存在します。倍率は2~6倍程度。ガリレオ式単眼鏡とも言われ、同じレンズの光学的構成ですが、近距離でもピントが合うよう設計され、オペラ鑑賞というよりは美術館や博物館で好まれて使われています。
オペラグラスの光学的構成
オペラグラスは主にガリレオ式です。しかし、ポロプリズム式やダハプリズム式と呼ばれるプリズムを搭載した観劇用のオペラグラス(小型双眼鏡)もあるのです。元祖であるはずのガリレオ式を「オペラグラスタイプ」と呼ぶこともあり、オペラグラスの定義は非常に曖昧です。
そもそも単純構造のガリレオ式は、プリズム搭載の双眼鏡に劣るのは明確です。
それでも歴史の長いオペラグラスは美的嗜好品としても愛され続け、ガリレオ式は安価だという意味でも需要があります。元祖ガリレオ式に敬意を払うかのようにオペラグラスの定義はグレイなまま、プリズム搭載の見やすいオペラグラスが出現したのでしょう。
では、それぞれの光学的な違いや特徴を見てみましょう。
ガリレオ式オペラグラス
鏡筒の両端にある目に近い方を接眼レンズ、対象物に近い方を対物レンズと言います。ガリレオ式は、対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズ。その組み合わせだけで対象物を拡大して成立像を得ることができます。
レンズ2枚のみの構成なので鏡筒が短くなるため、コンパクトで軽量。また製造が簡単なので安価なのです。しかし、実視界の広さは口径に比例して倍率の2乗に反比例します。簡単に言うと、倍率をあげると視野が狭くなりぼやけて鮮明に見えないのです。よって倍率は2、5~4倍程度となります。
ポロプリズム式オペラグラス
一般的な双眼鏡は、広い視界を得るために両レンズとも凸レンズを使用しています。しかし凸と凸では対象物が倒立像(上下逆転)として見えます。そこで成立像を得るために、レンズの間にプリズムを搭載し、光の反射を利用して成立像が得られるよう工夫されているのです。
古くから双眼鏡の主流となっているのが、二つの直角三角形のプリズムを90度に組み合わせた「ポロプリズム式」。光度が高く比較的シンプルな構造のため、安価で容易く生産できます。構造上本体が大きくなるので、本来はオペラグラスには向きません。観劇目的のオペラグラス使用に作られているものは、「逆ポロ(ミニポロ)」と呼ばれる、対物レンズと接眼レンズを逆に配置して小型化したものです。
倍率も手ぶれのしない6倍~8倍で、ガリレオ式よりは高い倍率となります。しかし双眼鏡は倍率が高ければ良いわけではありません。倍率が上がると視界が狭くなるのです。けれど大きめの劇場では、ガリレオ式より倍率が高い方が需要があるのです。
ダハプリズム式オペラグラス
一方「ダハプリズム式」は、凸レンズと凸レンズの間に、一部屋根の形(ドイツ語でダハという)をしたプリズムを搭載して成立像を得ます。複雑なプリズムの組み合わせと特殊コーティングでポロ式に劣らぬ光度を取り込み、光軸が一直線になる工夫がなされてます。よって対物レンズと接眼レンズが一直線で筒がまっすぐ。コンパクトでスタイリッシュで非常に人気があります。
しかし生産費用が高いため同ペックでも、ポロ式より値段が高くなります。また、ダハ式の中には「二軸ダハ」と言って、二つの軸でコンパクトに折りたためるものがあります。目幅が調整しやすいので女性や子供にも使いやすいのです。