双眼鏡とは?種類や性能の基礎知識
双眼鏡はバードウォッチングや観察、景観を楽しんだり、オペラや劇鑑賞まで幅広く使われ人気のある道具です。双眼鏡と言ってもレンズや仕組み、機能によって様々な種類に分けられています。
ここでは双眼鏡とは何なのか?から始まり、他の望遠鏡との違い、双眼鏡のスペックの見方などを紹介しています。
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そもそも双眼鏡って何?
双眼鏡とは地上望遠鏡を2つ平行に並べたもので、遠くのものを拡大して見ることができます。両筒で同じ大きさに見えるように調整されているので、単眼鏡のように片目で見るよりも楽に遠近感や立体感のある視野を楽しむことができます。
また、天体望遠鏡だと肉眼で見たときとは上下左右が逆の倒立像になるのに対し、地上望遠鏡を2つ平行に並べた双眼鏡は肉眼で見たままの上下左右で正立像になります。
天体望遠鏡と地上望遠鏡の違い
天体望遠鏡と地上望遠鏡の主な違いは以下の4点が挙げられます。
- 見る対象との距離
- 倍率
- 架台の大きさ
- 見え方(上下左右)
天体望遠鏡は宇宙の天体を見るために作られているので、真っ暗な宇宙から少ない光をできるだけ集めるためにレンズが大きく、倍率も高いのが特徴です。倍率は家庭用の天体望遠鏡で100~200倍が一般的です。宇宙では上下左右があまり関係ないので倒立象で見えます。
地上望遠鏡は地上の景色を見るために作られているので、光を集める必要がなく、レンズは小さめです。あまり拡大しすぎても見えづらいので、倍率は20倍以下が一般的です。地上では上下が逆になると使いにくいため、肉眼と同じ上下上下左右の正立像になるように改良されます。
その他に望遠鏡を乗せる架台も大きく違います。天体望遠鏡では倍率が高く少しでもぶれると見えづらいのでより固定される架台を使います。それから天体は自転で動くので、その自転軸に合わせて動く架台もあります。
地上望遠鏡はそこまで固定する必要がないので、持ち運びやすさなどを考慮して軽い架台が選ばれます。
オペラグラスと双眼鏡の違い
オペラグラスと双眼鏡の主な違いは以下の3点が挙げられます。
- 見る対象との距離
- 倍率
- 大きさ
オペラグラスは名前の通りオペラを鑑賞するために作られたもので、倍率が高くなく、せいぜい3~4倍が限度です。オペラを鑑賞する際に大きな望遠鏡では不便であり、上下が逆になっても困ります。そこでオペラグラスは対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使うことで上下左右が反転しないように作られてます。その他オペラグラスは倍率を上げると視野が狭くなっていく特徴があります。
双眼鏡はある程度は倍率も必要なため、対物レンズも接眼レンズも凸レンズを使用しています。そうすると上下左右が逆になってしまうので、プリズムという仕掛けを入れ、光を反射させ正しく見えるようにしてあります。プリズムを入れるとコンパクト化することが難しいので双眼鏡自体がオペラグラスよりは大きくなります。
単眼鏡・フィールドスコープとの違い
単眼鏡と双眼鏡の違いは単に筒の数のみで、単眼鏡が1本、双眼鏡が2本です。強いて言うならば単眼鏡のほうが目が疲れやすく、遠近感が得られにくいです。
フィールドスコープは地上用の単眼の望遠鏡で、双眼鏡と比べるとより遠くのものを見ることができます。しかし単眼であるために立体感に欠け、持ち運びにも不利になります。携帯用には双眼鏡、遠距離の定点観測にはフィールドスコープと言ったように使いわけされることが多いです。
双眼鏡の種類
双眼鏡の中でも対物レンズの種類や接眼レンズの種類、プリズムの有無や機能で以下の4種類に分けることができます。
- ガリレオ式双眼鏡
- リレーレンズ式双眼鏡
- ポロプリズム式双眼鏡
- ダハプリズム式双眼鏡
これらの特徴について簡単に解説します。
レンズ・プリズムの構成
双眼鏡のレンズには対物レンズと接眼レンズが使われていて、その中でも凸レンズと凹レンズがあります。プリズムとは上下左右が逆になって観測したものを反射させて肉眼と同じに見せる装置です。
双眼鏡は対物レンズと接眼レンズの凸凹の組み合わせとプリズムで構成されています。
ガリレオ式双眼鏡の特徴
対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使用したシンプルなものです。レンズの凸凹の組み合わせで対象の上下左右が逆にならないので、内部にプリズムを入れる必要がなくコンパクトで軽量です。オペラグラスなどもガリレオ式が使われており、倍率は2~4倍程度と低く、視野もあまり広くないのが特徴です。
リレーレンズ式双眼鏡の特徴
対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凸レンズを使用しています。対物、接眼ともに凸レンズを使用することで倍率は大きくなりますが、対象の上下左右が逆になってしまいます。そこで対物レンズと接眼レンズの間に複数のレンズを入れ、正立像を得る仕組みなのが特徴です。この後にプリズムが出てきたことによって今ではあまり見かけることがなくなりました。
ポロプリズム式双眼鏡の特徴
対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凸レンズを使用しています。ここは同じく、対物、接眼ともに凸レンズを使用することで対象の上下左右が逆になってしまいます。そこで対物レンズと接眼レンズの間に直角プリズムを複数個入れることで光を反射させて正立像を得る仕組みになっています。
ポロプリズム式ではプリズムを複数個入れる必要があるため、双眼鏡自体をあまりコンパクト化することができず、後述するダハプリズム式双眼鏡に比べると大きくなります。
ダハプリズム式双眼鏡の特徴
対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凸レンズを使用しています。ここも同じく、対物、接眼ともに凸レンズを使用することで対象の上下左右が逆になってしまいます。そこでプリズムを入れるのですが、ダハプリズム式双眼鏡に入るプリズムは屋根型のダハ面(ルーフ面)を持つダハプリズムを使用しています。
このダハプリズムは複数個入れる必要がないため双眼鏡自体をコンパクトにすることが可能です。
機能で分ける双眼鏡の種類
双眼鏡には防振や防水などの機能が備わっていて、機能ごとに種類分けすることができます。ここでは以下の5種類について特徴を簡単に説明します。
- 防振双眼鏡
- 防水双眼鏡
- デジタル双眼鏡
- 対空双眼鏡
- ズーム双眼鏡
防振双眼鏡の特徴
字の如く防振機能を備えた双眼鏡です。多くの防振双眼鏡は電池による防振で、スイッチを押すことによって振動を軽減します。
防水双眼鏡の特徴
不活性窒素ガスを充填し、防水機能を持った双眼鏡です。雨や雪に強く、アウトドアでの使用でも安心して使うことができます。
デジタル双眼鏡の特徴
デジタル双眼鏡はデジタルカメラ機能を備えた双眼鏡です。高倍率で静止画を撮影できます。機能によっては動画を撮影できるものもあります。
対空双眼鏡の特徴
天体双眼鏡とも言われ、天体望遠鏡を2本並べた双眼鏡になります。上空を長時間観測しやすい構造になっています。
ズーム双眼鏡
双眼鏡の倍率はレンズの口径で決まるため、固定の物が多いですが、ズーム機能を持ったものもあります。拡大縮小を利用して見たいところだけをズームできる反面、ズームしていくと像の質は悪くなる傾向にあります。
双眼鏡のスペックの見方
双眼鏡を選ぶときに大切なのは倍率だけではありません。双眼鏡の主要性能は〇×△AA°というように表記される倍率と対物レンズ口径、および視野角(視界)で表現されます。ここではそれらのスペックの見方について解説していきます。
双眼鏡の倍率について
双眼鏡の倍率は〇×△AA°で表記されたうちの〇の部分です。一般的には倍率は高ければ高い方が良いと思われがちですが、倍率が高くなると視野が狭くなり、手振れの影響も受けやすくなります。
双眼鏡の良いところは手軽に手で持って使用できる点です。そのことから考えても倍率は5~8倍が扱いやすく、それ以上になるようなら架台や三脚を使った方がよくなるので双眼鏡のメリットが失われてしまいます。
また、倍率の考え方として8倍であれば、1000メートル先の物を見たときに125メートルまで近付いて見たときと同じになるということです。
双眼鏡の対物レンズ有効径について
対物レンズの有効経は〇×△AA°の△の部分です。対物レンズの有効経が大きければ光を集める力が高く、解像度と明るさが良くなります。ただこの対物レンズ有効径が大きくなると双眼鏡も大きくなる傾向にあります。
双眼鏡の実視界について
実視界は〇×△AA°のAA°の部分です。これは双眼鏡を動かさずに見ることができる範囲を対物レンズの中心から測った角度のことです。つまり実視界の数値が大きければそれだけ視野が広いということです。
実視界は使用目的によって必要性が変わります。例えばバードウォッチングなど動きの速い物に対しては視野は広い方が便利です。
双眼鏡の明るさについて
双眼鏡の明るさは倍率が同じであれば対物レンズの有効径が大きいほど明るくなり、これを数値で表すこともできます。
明るさはひとみ径の二乗という数値になります。ひとみ径は対物レンズの有効径÷倍率で表せるので、8×42の双眼鏡であれば、42÷8=5.3となり、ひとみ径は5.3です。
この5.3を二乗したものが明るさになるので明るさは28.1という数値になります。この数値が大きければ大きいほど明るいということになります。
双眼鏡の最短合焦点距離について
双眼鏡を覗いた時にピントが合う最短距離のことで、この距離が短ければ近くの物を大きく見たいときに便利になります。双眼鏡の場合は短い物で1~2メートルほどになります。
双眼鏡のアイレリーフについて
アイレリーフとはケラレ(視界にレンズフードなどが入ること)が発生することなく、見ることができる位置を接眼レンズから測った長さです。アイレリーフが長ければ覗きやすく、長時間覗いても疲れにくいというメリットがあります。
普段、メガネを使用して生活している人の場合、アイレリーフの長さが短いと使用できない可能性もあるため、選ぶ際には注意する必要があります。