初心者必見!フルートのタンギングの種類と練習方法
フルートは息遣いで音量や音域を調整することができます。また音の切れ目をはっきりさせる為に舌を使って調整することもできます。これをタンギングと呼び、練習しなければいけないポイントになります。
フルートのタンギングは慣れるまでは一定の難易度があり、タンギングによって流れるような演奏になるかが決定付けられます。
ここではきれいで流れるような演奏を実現するためにも、フルートのタンギングの種類と練習方法をご紹介していきます。
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タンギングの目次
タンギングとは
タンギングはフルートを含めた管楽器に使われる演奏技法の総称です。元々は「tongue(舌を出す)」という動詞から来ており、これが現在分詞「tonguing」として音楽用語になっています。
つまりは舌を使った技法であり、tやkの発音と同じ動きを用いることによって各音階の開始のきっかけを与え、強弱の調整や空気の流れを瞬間的に遮断することで様々な音を作り出すときに使います。
タンギングの種類
タンギングですが大別すると3種類に分かれます。
- シングル
- ダブル
- トリプル
これらは曲想とテンポによって奏者が使い分けるのですが、発音方法も異なってくるので、それぞれに着目してご紹介していきましょう。
シングルタンギング
シングルタンギングはゆっくりとした楽句に使用するタンギングであり、発音方法は舌を上段の歯の裏側に当てtüと発音することで得られます。
後述のダブルタンギングの方が便利で有用であるのに対して、シングルタンギングははっきりとした明瞭なものでないといけないことに意識しすぎて、極端に遅くなるとなど上手くできない方が多いようです。
しかし、バロックや古典派の曲を演奏するときには、シングルタンギングが出来なければ表現の幅が狭くなってしまう恐れがあり、豊かな音色を奏でることが出来なくなってしまいます。
ダブルタンギング
ダブルタンギングは舌の前と奥を交互に使用することで素早いタンギングを行う技法です。シングルタンギングでは行えない速いパッセージであっても、悠々と演奏できてしまうことから、初心者が憧れるテクニックでもあります。
発音方法は舌の前と奥を出来るだけ柔らかく使い「ドゥグドゥグ(du gu du gu)」や「ディギディギ(di gi di gi)」に近い発音を行うことで得られます。
注意としては「タカカタ」と発音するように教えられることがあるのですが、硬い響きとなってしまいきれいに発音できない為、上記のどちらかを意識すべきです。
トリプルタンギング
ダブルタンギングよりも使用される場所は限定的ですが、有用に働きよく使われる技法になります。
トリプルというだけあり、ダブルタンギングよりもさらに速いパッセージで使用されますが、限定的と記したのは音が3つ束ねられた三連符に利用する為です。
その発音方法は「ティケテ(ti ke te)」の発音を意識するようにすると良い発音を作り出せるようになります。ダブルタンギングを習得された方であれば、それほど難しい技法ではないでしょう。
タンギングの仕方
タンギングのがどういうものなのか、種類についてはご理解いただけたと思いますが、いざ実践しようにもそのやり方によって上手く出来る場合と出来ない場合があります。
正しく行うためにも、その方法を理解してタンギングに取り組むことが大切になります。
まずは正しいやり方とそうでないやり方を比較しましょう。
正しいやり方は先述通り発音は「トゥ(tü)」であり、上下の歯を噛んで重ねる、つまり隙間が無いようにしてから少しだけ開き、唇と顎は前後に動かないようにして発音します。
この際、舌は軽く前歯の裏側に当て、内側を閉じた状態にして軽く息を押し付けることで上手く発音できます。
悪いタンギングになると舌の先のとがった部分が歯の間に来てしまいます。
これは歯並びの問題や、下顎が前もしくは後ろに気過ぎてしまうことで起こります。
要するにアンブシュア同様、舌によって正しい口内空間を作り出せていないことが悪いタンギングの原因になってしまっているのです。
舌の位置
正しい舌の位置には様々な議論がありますが、先述した舌を前歯の裏側につける位置がよく見られます。他にも舌の位置を下に置く、自分で舌を動かしやすい位置に置くなどが見受けられますが自己流になってしまうこともしばしばです。
もともとフルートは欧州で生まれた楽器であり、タンギングで必要なトゥについても本場の発音が必要となります。ただ日本語とヨーロッパで使われている言語には大きな違いがあり、子音を強く発音する文化を日本語は有しません。
正しく行う為にも前歯の裏側に舌をつけることではっきりと子音を発音することができ、音の立ち上がりが明瞭になるというわけです。
タンギングの練習
タンギングをする為の舌の位置などが分かっていただけたかと思いますが、練習しなければ身に付く技法ではありません。
それではここからタンギングの練習法としてよく利用される方法をご紹介していきます。
タンギングの練習方法
タンギングの練習、と言っても実はそれほど難しいものではないのです。
「正しい位置に舌を触れさせて息を押し付ける時に離す。」というのを繰り返します。舌突きとも紹介されるため、ついつい力んで行いたくなりますが、あくまで舌はリラックスし息の力で舌が離れるという意識を持つといいでしょう。
タンギングは音を出すのではなく、音の区切れを作るのが目的です。更に言うならスラーの時の息の流れに、瞬時に区切れを付けるのが役割という事になります。
つまり音を止めることなく区切れ目を付けるわけです。さらに上達するために細かくその練習手順を見ていきましょう。
タンギングなしで吹いてみる
まずはタンギングなしで吹いてみましょう。音の区切れ目を付けるためにも、きれいなスラーが出来ていなければいけません。
タンギングなしで音を繋いで吹いてみてください。
16分音符で真ん中のソを一分間タンギングし続ける
この方法をするにはメトロノームが必要になります。
まずはメトロノームを60に合わせ16分音符で真ん中のソを1分間タンギングし続けるという練習を行います。1分間テンポが変わらず行えたら、次の日はメトロノームを上げて練習してみましょう。
こうすることで、自分の可能なタンギングのテンポがどこなのか知ることができ、また可能なテンポを引き上げる練習にもなります。
ただしあくまで1分間通せるテンポで行ってください。後半遅くなるようなら、まだそのテンポは自分には合わないテンポになります。
力んでしまうと後半バテやすいのでリラックスして行うようにしましょう。そうすることで早い舌の動きも可能になってきます。
早口言葉を言ってみる
早口言葉もタンギングの上達には有効です。
結局のところ舌が早く上手に動かせるかがタンギングの大きな鍵になります。その為、普段から発音が悪い方や舌足らずの方は特にこの練習をすることで上達しやすくなります。
もちろん普段からきれいな発音が出来ている方も、早口言葉を練習することでタンギングの上達に繋がります。演劇部やアナウンサーの方々のように言葉の発音も重要な要素となるのです。
ポイント
上達するための方法もおさえてきましたが、その際押さえておきたいポイントもあります。実際に練習してもできない、という方もいらっしゃると思いますが、実は次のようなポイントを見落としているために、上手くいかないという事もあるのです。練習の際には是非意識してみて下さい。
必ずメトロノームを使用する
メトロノームはタンギングの練習にとってなくてはならないものです。いい加減に舌の動きの練習をしてもタンギングは上達しません。
音楽である以上、リズムは非常に重要な要素になります。必ず使用するようにしてください。
舌の力を抜く
舌の力を抜くことも重要であることは、何度もご紹介してきました。
例えばボクサーが3分間のリングの中で常に筋肉に力を入れて動いたら、途中でバテてしまい強いパンチが打てず、足も止まってしまい倒されてしまうことでしょう。
あるいは皆さんが一度は走ったことがあるであろう50m走も、最初から全力で力を入れて走れば上手く力が使えないだけでなく、後半パワーが出ず遅くなってしまうのです。実は速く走れない方の1つの原因がこれです。
タンギングにおける舌でも同じことが言えます。
常に緊張した状態では、舌は素早く動かせないどころか、後半になればなるほど疲れてしまいタンギングがしっかりできなくなってしまいます。
速いタンギングを1曲ないし何曲もある中で変わらず行う為にはリラックスして行うことも必要となってきます。舌の力を抜くことを意識して行うようにしてみてください。
舌は突かずに触れるだけ
舌突きという言葉に惑わされないようにしてください。これを意識すると強く舌を付かなければいけないと思い、上述の舌に力が入るというデメリットを引き起こしてしまいます。
あくまで所定の位置に触れるだけという事を意識すると、リラックスした状態でタンギングを行うことができます。
顎はいらなく動かさない
下顎の位置の問題で悪いタンギングになることもご紹介してきましたが、舌を意識するあまり、顎の意識が疎かになってしまうことがあります。
下顎は前過ぎず後ろ過ぎず、正しい位置のままあまり動かさないように意識しましょう。
タンギングに関する様々な疑問
タンギングを演奏中に行うと誰しもが感じる疑問があります。大抵の方が一度は陥る問題でもあるので、ここでまとめてみました。
- タンギングしていると唾が溜まる
- タンギングスラーはどうやるの?
- タンギングとスタッカートの違い
一通り目を通しておくと、後々陥ったときに役に立つかもしれません。
タンギングしていると唾が溜まる
フルートに関わらず管楽器を吹いていれば陥りやすい問題です。特にタンギングを発音すると唾が空気溝に溜まってしまうという悩みなのですが、口内が乾燥してしまう以上、唾液が出るのは仕方なく息継ぎの時などに飲み込むしかありません。
ただ排出量などは個人差があるものの、タンギング時に舌に力が入っていると、唾液腺が刺激されるため余計に唾液が出てしまうので溜まりやすくなってしまいます。
解決方法というわけではないかもしれませんが、溜まりやすいと感じるのであれば、タンギングの方法が正しいかどうか、特に舌に力が入っていないかもう一度確認してみてください。
レガートタンギングはどうやるの?
レガートというのは音の間をつなげて隙間なく吹く奏法指示です。音をつなげて吹くことで、滑らかさや柔らかさなどを表現することができます。その為、レガートの指示が出されている場合は舌を突かず演奏するのが一般的です。
レガートタンギングは、レガートの指示が出されているフレーズの中に同一の音が並べられたときに使用します。同一の音が並べられたときに舌を突かずつなげると、音と音がつながり楽譜通りに演奏できません。
ですので、同一の音が並べられた場合はタンギングをします。このタンギングがとても難しいのです。
様々な方法がありますが、初心者の方であれば完全に舌を付かないハーフタンギングや、ジャズタンギング(ジャズタンギングはレガートタンギングと言われています)によくある発音を「ドゥ」、「ディ」等の濁点に変える方法がいいでしょう。
タンギングとスタッカートの違い
この2つは混同しやすいのでよくある悩みとして挙がりますが、これはどちらも舌を使って音を切るというイメージが先行しているために起こるのではないかと推測されます。
これまでタンギングについてはご紹介してきた通りですが、音の区切れを付ける演奏技法になります。音と音の区切れを明確にする技法だと思ってください。
例えば「あいうえお」を棒読みにした場合、「あ」と「い」の区切れ目があるのが分かると思います。他の母音も同じですが、言葉と言葉には明確に切れ目が存在します。タンギングは音において、その切れ目を明確にするという役割を担っているのです。
それに対してスタッカートは音を短く切る演奏記号であり、同じ音が続いていても音を切るという役割があります。このあたりは実際に演奏したことがない方や習ったことがない方には似ているようにしか感じないかもしれませんが、意味合いは大きく異なります。