フルートが長持ちするコツ!手入れ方法や道具と保管方法
フルートは比較的安価な物でも数万円はするため、気軽に買い替えられるものではありません。しかし長く使い続ければ、少しずつ劣化していき、その音色や演奏のしやすさにも変化が出てきます。
フルートを出来るだけ長く使うには、やはり手入れが必要不可欠です。ただ楽器の手入れというのは正しい手順で行わなければならず、また保管方法もしっかりしていなければ意味がありません。そこでこちらではフルートが長持ちするコツ!手入れ方法や道具と保管方法をご紹介していきます。
スポンサーリンク
フルートの手入れの目次
揃えておきたいフルートの手入れ用品
まずフルートを手入れする上で揃えておくべき用品からご紹介していきましょう。フルートは機械ほどではないものの、丁寧な手入れが必要なので、用品の準備は必需とも言えます。そのため以下にリスト化したものは一通り準備しておくことをおすすめします。
それではそれぞれの役割や使い方などのポイントを見ていきましょう。
クリーニングロッド
現在の価格はコチラ |
フルートは基本円形に長い形状であることは分かると思いますが、例え分解したとしても1つずつのパーツはある程度長くなっています。そうなると内部の中心部分には手や指は届かず、水分や汚れの拭き取りができません。
そのように手が届かない部分でも掃除するために必要なのがこのクリーニングロッドになります。
ロッドの先端に空洞があるため、そこに後述のガーゼなどを通して、ロッドをフルート本体の内部に通すことで拭き取ることが出来るのです。この用品はリコーダーにもあったのでご存知の方も多いのではないでしょうか?おそらくもう手元にない方がほとんどでしょうが、リコーダーのロッドでも代用できますが、他にも細長いもので長ければ代用が可能となります。
商品によっては反射板位置チェックのための溝が入っているものもあるので、そのようなものを購入すると便利です。またプラスチックがほとんどですが、木製のものも販売されています。扱いやすさも考えると出来るのであれば木製の方をおすすめします。
ポリシングガーゼ
現在の価格はコチラ |
上述のクリーニングロッドに巻き付け、内部の水分を拭き取る為のガーゼです。
通常のガーゼでも代用が可能ですが、こちらは楽器内面ように作られており、天然由来の抗菌成分であるキトサン処理をされているので、微生物やウイルスなど、臭いの原因物質も取り除いてくれます。
価格としては一般のガーゼより高いものの、高額というわけではないのでこちらをおすすめします。
クリーニングペーパー
現在の価格はコチラ |
クリーニングペーパーはフルートの外側についた水分を拭き取るものになります。こちらはペーパーであることから携帯しやすく、常に持ち歩いている方もいらっしゃいます。
しかし注意が必要で、これを常時使い続けると、タンポ(パッド)部分のフィッシュスキンが持つ油分や防水剤まで取り除いてしまい、かえってタンポ内部に水分が侵入しやすくなってしまいます。
こうなると調整が狂いやすくなるというデメリットが発生します。1回2回で出るトラブルではありませんが、常日頃から行うメンテナンスで使い続けると起こるリスクなので、あくまで応急処置的な場合に使うものと思っていただくといいです。
例えば、長時間の練習などでトーンホールから水分が出てきて、分解して水分を取り除けない場合など、どうしても水分を取り除く必要がある時に使うといった形になります。ただこのクリーニングペーパーよりもティッシュペーパーの方が水分を吸収するため、あまり推奨はされていません。
ポリシングクロス
現在の価格はコチラ |
ポリシングクロスはフルートを磨く為に必要な用品になります。
長期的に使用していくとサビなどが出てくるため、それを落とすために使うものだと思ってください。ただ日常的に使う用品ではなく、慣れていない方が使うと艶にムラが出来てしまうこともあります。
また使用時にはキーの分解なしで磨いた場合、タンポの摩耗やコルクを剥いてしまうというリスクも出てきます。そのため使用する場合は丁寧に行う必要があり、また複雑に入り組んだ場所は避ける必要があります。あくまで表面の手が出せる部分を拭くだけにと留めましょう。
細かい部分や内部の黒ずみなどは調整に出した時に、その筋のプロに磨いてもらうのが一番です。同じようなものでシルバークロスもありますが、こちらは研磨剤が含まれており、余計にムラができやすくなっているので素人にはおすすめできません。
もし選ぶのであれば、銀磨きは含まれていないものを選びましょう。YAMAHAのポリシングクロスには少量ですが銀磨きが含まれているため、扱いが難しいです。ムラマツから出ているものはネル地のままなので、フルートを傷める心配も多少ですが少なくなります。
キーオイル
現在の価格はコチラ |
キーオイルは金属摩耗などを防ぐため、金属と金属の接触部分などにさすオイルになります。つまり潤滑油としての役割を持っているという事ですね。
こちらも日常的に使うのではなく1~2カ月に1回、微量のオイルを注油するだけで十分です。そのため販売しているボトルの容量は少なめとなっています。その癖、価格は2,000円台のものもあり、やや高めに感じますが、頻繁に購入しなければいけないものでもないので、そこまで高い買い物でもありません。
またこちらは管楽器、特にフルート専用に作られたオイルになるので代用はききません。適当なオイルを注油するとフルートを傷めますし、キーオイルと他のオイルを混ぜて注油すると変質を起こすこともあるので注意が必要です。
こちらもYAMAHAよりはムラマツ製のオイルをおすすめします。YAMAHAが悪いというわけではありませんが、ムラマツでは長年培ってきた研究結果を元に生まれたオイルなので、非常に適したものとなっています。
ただキーオイルも出来る事ならプロにさしてもらうといいです。素人がやると、分量が多すぎで埃を呼び、キーの動きを悪くすることもあります。神経質になりすぎる必要はありませんが、もし出来るなら整備の時に店員さんに聞いてみてもいいかもしれません。
トーンホールクリーナー
現在の価格はコチラ |
トーンホールクリーナーはトーンホールやキーの細部の汚れを取る時に使用する細長い棒状の用品になります。
物自体も柔らかく、芯には針金が入っているので折り曲げて使用することも可能です。ただ細い棒にクロスやティッシュなどを巻き付けて代用することも可能です。
ただしティッシュの場合は破片が千切れて内部に残ってしまうなどのリスクもあるので、あくまで応急的な代用になります。
価格としても安く、1セットで6本ほど入っているのでコストもそれほどかからないため、こちらを買っておく方が無難でしょう。
演奏後に行いたい日常のフルートの手入れ
フルートは日常的な手入れをしっかりしないと、サビの発生や埃の堆積によって音質が変わってしまい、正しい音程が出なくなってしまいます。
また空気の流れを変えてしまうため、音の響きが保てなくなってしまいフルートの良さを殺してしまうのです。それ故に日常から丁寧な手入れがきれいな音を奏でるため、そして長期的にフルートを愛用していくために必要なのです。
ここからは毎回の演奏後にやっておくべき日常的な手入れの方法をご紹介していきます。
管の中の水分を除く
まずは手入れのためにフルートを3つに分解します。この際、キーは強く握らず胴部管から足部管を外し、続いて胴部管から頭部管を外しましょう。
そのあとはクリーニングロッドにガーゼを巻き、ロッドで頭部管、胴部管、足部管内の水分をしっかり除去します。特に頭部管の奥にある反射板の水分をしっかり取り除きたいのですが、ここは拭き取りにくいので傷つけないように慎重に行ってください。
もし出来るなら「BG頭部管スワブ」などを使うとガーゼよりは簡単に水分を拭き取れます。このように水分をしっかり取り除くことで、本体のサビなどを防ぎ、また臭いの原因も取り除くことができるので、長期的にフルートを使うことも可能となってきます。
タンポの水分を抜く
タンポに水分が付着したままだと、タンポの寿命が短くなってしまい、またサビの原因にもなります。クリーニングペーパーで水分をしっかりと拭き取りましょう。ただ先述したように、あまり強く拭きすぎると油分なども取り除いてしまうので注意です。
水分を取るだけならティッシュでも十分取れるので、タンポを長期的に使いたいのであればティッシュを使うか、クリーニングペーパーの正しい使い方をプロに聞いてみるのもいいかもしれません。
表面の汚れを取る
銀メッキや銀に指紋や汗が付着したままにしておくと、黒ずみや変色の原因となるため、ポリシングクロスなどで拭き取ります。この時、磨くのは表面だけであまり細かい部分を磨かないように気を付けましょう。
また新品だと、かえって傷を増やすだけになることもあるので、極力控えることをおすすめします。各部ジョイント部分も汚れが溜まるので、少し磨いてあげるといいですが、こちらもあまり強く磨きすぎると金属が摩耗するので注意してください。
表面の汚れを取るにはこのクロスを使った方法の他に、アルコールを使う方法もあります。
定期的に必要なフルートの手入れ
毎回の演奏の手入れのほかに定期的に行う手入れもあります。
毎日行う必要はありませんが、週1回または月1回は必要な手入れとなるので、忘れず行えるようにチェックをしつつ、こちらでその方法を理解していきましょう。
頭部管内にある反射板の位置を確認する
反射板は、日々のメンテナンスやヘッドスクリューの緩みを直した拍子に位置がズレてしまい、音のバランスが崩れてしまう原因となります。そのため定期的に位置の確認をする必要があります。
ここでもクリーニングロッドが活躍するのですが、頭部管を分解した状態でロッドを差し込み、先端を反射板に当てます。その状態で唄口から覗き込み、ロッドに刻まれた線が唄口の中央部に合っているかどうか確認してください。
具体的には反射板から唄口の中央部までが17mmになっているはずです。もしズレていた場合、例えばキー側に出てきている場合は、ロッドの先端にガーゼを巻き、正しい位置に反射板を押してください。
ただし思いっきり押さず、少しずつ力を加えて押してください。
逆に反射板が奥(ヘッドスクリュー側)にズレていた場合は、ヘッドキャップを緩め、正しい位置まで反射板を押してから、再度ヘッドキャップを締めてください。頻繁に反射板が動くようなら、コルクが摩耗している可能性があるので、専門店で交換を依頼するようにしてください。
キーにオイルを差す
キーオイルは定期的にさすことで金属摩耗を減らすことができます。しかし先述したように、素人がいい加減にさすと、かえってフルートを傷めてしまうのでおすすめしません。
キーオイルを購入すると説明書も付いてくるので、それに従ってさす方法もありますが、長持ちさせたいのであれば、プロに任せるのが一番です。どうしても自分でさしたい方も、一度店員さんに習ってからさすことをおすすめします。
トーンホールやキーの汚れを拭き取る
トーンホールの汚れはトーンホールクリーナーを使ってキーの下側など細部の掃除をすることで、汚れや水分も取り除くことができます。総じてトーンホールやキーを保護していくために必要ですが、定期的に行う程度でも十分にきれいに保てます。
キーのネジをチェックする
キーのネジは動き続ければやがて緩んできます。そのため定期的にチェックして締めてあげるのが大切ですが、出来れば素人が触らない方が良いです。
力加減を間違えるとネジ穴を潰してしまいますし、何よりもキーの動きが悪くなることもあります。キーのネジが緩んでいるようなら、専門店に持ち込み締めてもらうようにしましょう。
正しいフルートの保管方法
手入れでせっかくきれいにしても保管方法がいい加減であればやはり状態は悪くなってしまいます。そのため、正しい保管方法も知っておく必要があるのです。
フルートは基本、分解してフルートケースに入れて保管しますが、この際注意することがいくつかあります。まずフルートは湿度に弱いため、フルートケース内の湿度を一定に保つためのしおりと銀の変色防止のシートを入れておくことです。これを入れておくことで、手入れをした後のフルートも状態を損なうことなく保管することができます。
また手入れに使用するクロスやガーゼはケースの外に保管するようにしましょう。特に使用したクロスやガーゼは水分を含んでいるため、湿度を変える原因となります。一緒に保管せず専用のケースなどを別で用意しておきましょう。
保管時のポイントですが、フルートの分子構造上、音色を良くするためにも真北に向けてケースを置くといいという話があります。これは有名なフルート奏者ジェームズ・ゴールウェイの教えに基づく方法らしいので、試してみるのもいいでしょう。
フルートの保管に適したケースの選び方
フルートを頻繁に持ち運ぶか否かで選び方は変わります。基本的にはフルートに衝撃を与えないためクッション性のものが内部にあるものが最適となります。
価格はそのデザインや機能性などからピンキリとなりますが、相場は5,000円から10,000円程度だと思っていただくといいでしょう。
フルートの正しい保管場所
フルートは湿度に弱いという事もあり高温多湿の場所は避けるようにすべきです。これは他の楽器でもそうですが、直射日光が当たらない15~25℃程度の環境がおすすめとなります。
時間帯によって温度が変化しやすい場所も避けてください。押入れも湿気が籠るためよくありません。リビングなど人が集まりやすいところは室温も安定しているので、おすすめです。
フルートを修理に出すタイミング
どれだけ丁寧に手入れをし、正しい保管方法で片づけておいたとしても物質である以上、経年劣化はしてしまいます。それについては素人ではどうしようもありません。これはプロの奏者も同じで、吹くことについてはプロフェッショナルでも、フルートの整備についてはプロではありません。
つまりはその筋のプロに定期的に見てもらうことはプロの奏者でもアマチュアでも変わらず重要なのです。この定期的なプロによる点検も良い音を出すための大切なポイントとなっているのです。
おそらく購入した時に、3カ月程度、そして半年程度に一回見せて下さいとのアナウンスもあることがありますが、購入当初はそれくらいを目途に調整に出すといいです。特に買った当初は自分に合わない部分も出てくる可能性があるので、短いスパンで調整するといいでしょう。
その上で、あとは3~4カ月ごとに1回を目安に調整をお願いするといいです。だいたい1シーズンに1回ですね。また演奏していく中でちょっとした変化や不具合などが出てきた場合も、すぐに調整に行くことをおすすめします。
そうすることで故障などが早期に発見できる可能性が高いです。人の体も同じですが素人判断は非常に危険です。修理に出すタイミングも自分で考えるのではなく、プロの判断を仰ぐのが一番です。
修理に出すとお金がかかると思われるかもしれませんが、壊れてしまった後に修理不可能で新品を購入するより余程安く済むはずです。そのあたりも含め、プロに相談するというのが一番の解決策となるはずです。
修理にかかる日数と値段
上述通り、修理にはお金、そして修理時間がかかります。修理時間と値段に関してはその修理箇所によっても異なり、特に時間は持ち込んだ専門店の他の修理状況などにも関わってきます。そのためある程度の目安は予め把握しておき、その上で専門店に連絡を入れて診てもらい、具体的な時間とお金を教えてもらうといいでしょう。
修理箇所 | 日数 | 値段 |
定期調整 | 1~3時間 | 無料 |
バランス・パッド調整 | 1~3時間 | 3,000~7,000円 |
パッド調整 | 2時間~数日 | 3,000~4,000円 |
全タンポ交換 | 数日~1週間 | 55,000~85,000円 |
部分タンポ交換 | 2時間~数日 | 2,000~3,500円 |
針バネ | 1~3時間 | 1,500円~ |
ジョイント | 1~3時間 | 2,000円~ |
はんだ付け | 2日~ | 5,000円~ |
ロー付け | 2日~ | 5,000円~ |
分解掃除 | 3時間~ | 2,000円~ |
磨き | 2日~ | 5,000~15,000円 |
凹み直し | 2日~ | 4,000円~ |
バランス調整 | 1~3時間 | 3,000~7,000円 |
フルートの買い替えのタイミング
フルートを初めて購入した後に「フルートを買い替えようかなぁ」と感じるときがあると思います。まだの方もおそらくこの先、そう思うことがあるでしょう。しかし実際にどのタイミングで買い替えると良いのか、その時期は掴みづらいと思います。
大体は「今のフルートの音に満足できなくなったら」という意見が散見します。初心者の場合、大抵値段も抑えめな白銅や洋銀のものを購入していることが多く、これらは明るいレスポンスで素直な音が響きやすいフルートとなっています。
そのため、初心者としては、音は出しやすいですが吹き続けると、もっと深みのある音を求めるようになります。そのため音色に満足できなくなる、という事が起こるのです。ある程度練習が進み、上達してきたらフルートを買い替えるタイミングと思っていただいてもいいでしょう。