どのタイミング?テニス用ガットの張り替え時期と必要性
テニスラケットにおいてボールを返球する際、最も負担が大きいのがガットになります。ボールを受け止め返球するため、ボールが持つエネルギーを全て受け止めることになります。そうなるとガットは返球するたびに劣化していきます。
ガットが切れてしまっては確実に交換をしなければいけなくなりますが、切れる前に張り替えをしないと打球感にも影響を与え、良い練習が出来なくなってしまいます。しかし張り替え時期がわからない人も多いのではないでしょうか。
そこでこちらではテニス用ガットの張り替え時期と必要性などをご紹介していきます。
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ガットの張り替えの必要性
ガットはテニスラケットの中でも最も衝撃を受ける場所であり、負担を蓄積しやすい箇所なのは言うまでもないでしょう。速さや重さの違いはあれどボールを受け止め打ち返すために、瞬間的に力が加わります。
そのためガットが切れラケットが使えなくなるのはもちろんのこと、切れる前のガットを適切な時期に張り替えないとプレイに影響が出てきます。つまり良いプレイをする上でガットのメンテナンスと張り替えは非常に重要なのです。
ボールの飛びが悪くなる
ガットのメンテナンスや交換をしないとテンション維持性能が低下します。テンションが維持できなくなると意図せず低いテンションとなってしまい、反発力が失われるのでボールの飛びが悪くなります。
そうなるとボールを飛ばそうと力を入れるため、必然的に肘への負担が大きくなり、最悪の場合テニス肘になってしまうこともあります。
スピンがかかりにくくなる
スピンの掛けやすさはガットの太さに関係があります。ガットが細いほど摩擦が小さく、またガットの可動域が広くなるのでボールにスピンをかけやすくなります。
もしメンテナンスなどを怠りガットの状態が劣化すると、どれだけ細くても摩擦が大きくなってしまう、あるいはガット可動域が狭くなるのでスピンがかかりにくくなります。
また、強引にスピンをかけようとして肘に負担をかけてしまう、といった無理なプレイも出てくる可能性があるので、スピンを多用する方はガットの手入れと交換は念入りに行う必要があるわけです。
ガットの張り替え時期の目安
ガットの種類 | 特徴(打球感・反発力) | どんな人におすすめか | 代表的なガット | 寿命 |
モノフィラメント | 打球感は硬め 耐久性・スピン性能に優れている |
中・上級者でスピンを多用する方 | ルキシロン 4G | 1~3カ月 |
マルチフィラメント | 高反発 柔らかい打球感 |
女性やシニアの方 | VSチーム125 | 3カ月前後 |
ポリエステル | 高反発 シャープな打球感 |
速く重い返球 重視の方 |
4G DUO | 1年程度 |
ナチュラルガット | ホールド感 柔らかい打球感 |
コントロール重視の方 | HDXツアー | 6カ月~1年 |
ガットの張り替えの時期の目安が分からなければ、交換しようか悩んでしまう人もいるかと思います。ガットの種類によって張り替えの目安が変わりますので、そちらを参考にしてください。
上記の表はあくまで目安になりますが、基本的にはガットの症状に注意した方が良いかもしれません。
ただ前回ガットを張り替えてから、上記の表の期間いっぱいまで使用していたら、劣化が進んでいる可能性が高いので、症状が現れていなくても交換をすることをおすすめします。
次のような症状が出たら張り替えの目安になります。
- ボールの飛びが悪くなった
- 打球感が以前より硬くなった
- 打球音が鈍くなった
- ガットの交差部分に窪みが出来ている
- ガットが変色あるいは退色してきた
- ガットの表面が劣化しささくれがある
- フレームが変形した
フレームの変形はガットとは関係ないように見えますが、これはガットの張り方が不均衡の場合に起こる症状です。
もちろんフレーム自体をぶつけて変形した可能性もありますが、疑わしい場合はガットを張り替えるようにしてください。またこれはプレイ頻度を考慮していません。
当然ですが強い力で返球する方はそれだけガットにも負担がかかるため、緩みやすくなりますので注意してください。
張り替えてからの期間はいつか
張り替えてから次の張り替えの期間を考えるには、どのようなプレイスタイル、プレイ頻度で使用しているかは重要な要素になります。
もし週に5~6回、強打やスピンを多用していたとしたら、1ヵ月持たずにガットの交換をする必要が出てくる可能性が高いです。
逆に女性の方でパワーで押す方は稀ですし、そうであったとしても男性ほどのパワーは出ません。部活などで使用頻度が高い場合は、各ガットの使用期間が来たら張り替えをした方が良いかもしれません。
さらに、成人より上の方で週1回程度の使用頻度であればその限りではありません。
症状などが現れないことがほとんどだと思いますが、寿命を越えて使えるものでもありません。
様子を見て前回の張り替えからガットの寿命の最長期間を迎えていたら交換をすることをおすすめします。
感覚でわかるガットの張り替え時期
返球の際に
- ボールを重く感じる
- ボールの飛びが悪くなった
- ガットのしなり具合が硬くなった
といった変化が現れた場合は張り替えをするべきです。
ガットが最もいい状態を保てるのは非常に短い期間になります。そのため徐々に劣化はしていきますが、それでも許容できる範囲があります。
しかしボールの重みや飛び、受け止めるガットのしなりが変わると、無理に返そうとして肘に負担がかかりやすくなるので、そのような違和感があったらすぐに交換しましょう。
ガット張り替えまでの流れ
ラケットは適切にガットが張ってあることを前提でそのバランスを維持しています。そのためガットが切れたままにしておくと、テニスラケットのバランスが崩れて変形してしまう恐れがあります。
フレームのバランスを損なわないためにも、切れてしまったガットは速やかに取り除かなければいけませんが、この場合は切れていないガット部分も同様に切断しなければいけません。
勿体ないと感じるかもしれませんが、1本が切れるという事は他のガットも消耗劣化しきれる可能性があります。
ガットが切れた場合
テニスラケットはガットが強い力で引っ張ることでバランスを保っています。そのため、切れたままにしておくのはテニスラケットバランスにとって良くありません。
速やかにハサミやニッパーなどを使って古いガットを全て切ることをおすすめします。
緩んでいるとはいえ、ガットはかなりのテンションで張られています。
そのため、まずはセンターに当たる2本のガットを斜めに同時に切り、切れ目を入れたセンターを対象として切れてしまったガットと反対側の部分に切れ目を入れ、フレームに負担にならないように均等に切れ目を入れていきましょう。
全体が緩んだら一気にカットしていって構いません。
ガットが切れていない場合
ガットが切れていない場合はすぐに切る必要はありませんが、交換を決めたら切っておくといいでしょう。
後述しますが自分で張り替えるか、購入店などに持ち込んで交換してもらうかで変わりますが、例え店にお願いするにしても取り除いておいた方が親切ですし、多少ですが張り替えまでの時間が変わります。
ただしこちらは切れている部分が無いため、センターの2本を斜めに同時に切った後は上下左右でテンションが強くかかっているガットを切り、バランスを取りながらフレームに負担がかからないように均等に切っていきましょう。
ガットの張り替え方法
ガットは張り機さえあれば自分でも張り替えることが可能です。張り機に初期投資こそかかりますが、それ以降はガット代だけで交換できるので低価格での張り替えが可能です。
しかし、慣れないうちは適切な張り替えは難しいでしょう。そうなると多少お金がかかってでも業者に任せた方が早くて安心です。
業者に頼む
当然ながら販売店などに持ち込んでプロに張り替えてもらった方がスピーディーかつ安心して張り替えることができます。
料金は店にもよりますが、張り替えだけの値段は1,000~2,000円程度になります。これにガット本体の値段が別途かかると思ってください。
予め電話で連絡してあるか、他の予約状況によっても変わりますが短くても1時間程度、余裕を持って2時間もあれば張り替えは完了できる店がほとんどです。
ただし必ず店側に確認をしておくようにしてください。
業者に頼むメリット
メリットは何といっても上述通り手慣れていることもあり早いですし、仕上がりも信頼が持てることが多いです。
ただ全ての店が同じ品質というわけではなく、張り替えを行ってくれる人によって多少クオリティは変わるので、信頼できる店を見つけておく必要があります。
業者に頼むデメリット
デメリットとしてはガット本体以外の料金がかかってしまうので割高に感じてしまいます。また、早いとは言え完成するまで時間がかかるので、待つか再度取りに行く必要があるのが面倒かもしれません。
しかし、上記のようなメリットがあるので、張るのが面倒だったり上手く張れるか心配な人は業者に頼む方がいいかもしれません。
自分で張る
ガット張り機さえあれば自分でガットを交換することができます。最初は時間がかかるかもしれませんが、張り方さえわかれば安く済ませることができます。
特に使用頻度が高い人は毎回店に持ち込むのは大変でしょうから、自分で替えられるようになった方が何かと便利でしょう。
自分で張るメリット
ガット本体の価格だけで済むという点です。
初期投資としてガット張り機は必要になってきますが、テニスのプレー頻度が高いほどガットの張り替えの頻度も上がるため、総合的に見てかなりのコスパが高いです。
自分で張るデメリット
ガットの張り替えは慣れるまではネックです。力も多少いりますし、慣れるまではかなり時間をかけてしまうこととなります。
さらにテンションの調整なども最初は出来ていないことがあるかもしれません。
心配な人は業者にお願いするのが得策な場合もあります。
ガットを安く張り替えるには
ガットは消耗品である以上、必ず張り替えなければならないものですし、出来るだけコストを削減したいところですよね。
そこでここからは出来るだけ安く張り替えるための方法をいくつかご紹介していきます。
ロールガットを購入する
現在の価格はコチラ |
1回分のガットを毎回買うとコストとしても割高になりますが、ロールガットと言われる数回分の長さを持った商品を買うと割安になります。要はまとめ買いという事です。
バボラから販売されている「ガットRPMブラスト」は性能も良く、コストパフォーマンスも良いのでおすすめです。
持ち込みをする
店頭で張り替えをお願いするのであれば持ち込みの方が安いことがあります。これは張り替えるガットなどを用意し、一緒に持っていく方法です。
ただし持ち込み料がかかるとしても、格安のガットを購入して張った方がトータルすると安くなることが多いです。
ガットの張り方
一番安い方法はガットを自分で張り替えられるようになることです。特にガットがよく切れる方にとっては、これが出来ればかなりの節約になります。そうなると張り方を覚え、実践してみることも大切でしょう。
ここからはガットの張り方の手順をご紹介してきますので、もし出来るならば練習してみてください。
道具、材料
張り替えに必要な道具を確認していきましょう。
- ニッパー(ハサミ)
- ガット張り機
- 張り替え用のガット
- スターティングクランプ(滑り止め)
- セッティングオウル
ニッパーは当然ガットを切るために使用しますが、歯の部分が幅広の太めのものを使用した方が良いです。プラモデルなどを作る細いものだと力がそれなりに必要となり、刃こぼれもしやすくなるので、大きめのものを使いましょう。
ガット張り機はガットを張るためにフレームを固定しガットのテンションを調整できるものとなります。電動のものになるとかなり価格が高くなるので、手動のものをおすすめします。
張り替え用のガットは自分が使いたいガットを購入してきましょう。
スターティングクランプはガットを張っている途中で緩んでしまわぬよう固定しておく形状はペンチのようなもので、小型の万力のような役割を果たします。こちらは必ず必要というわけではないですが、あった方が張りやすくなります。
セッティングオウルはドライバーのような形をしていますが、ガットとガットの間に通しガットの緩みを整え、ガットを真っ直ぐに調整するために使用します。
手順
それでは手順をご紹介します。
- Step1:古いガットを切る
- Step2:ガット機にセット
- Step3:ガットをほどく
- Step4:縦糸を張る
- Step5:テンションをかける
- Step6:ゆるみを取りながら経糸を張る
- Step7:横糸を張る
- Step8:最後にラケット周りを張る
以上の8ステップになりますが、言葉だけでは分かりにくい点もあると思います。その場合は動画も参考にしながら作業を行うようにしてください。
Step1:古いガットを切る
古いガットを取り除きます。センター部分の2本をニッパーで同時に斜めに切ってください。続いてそこを中心に上下左右でテンションがかかっている部分を切ってフレームの負担にならないように緩めていきます。
全体が緩んだら一気にカットしていき、フレームからガットが抜ける程度の長さになったら手で抜いて取り除きます。この際、フレームなどに傷をつけないように優しく抜いてください。
Step2:ガット機にセット
ガット張り機にセッティングします。使っているガット機にもよりますが、出来るだけ中心にくるようにフレームをセッティングし、サイドを固定してから、センターを留めます。
この際、傷が付かないようにパットを当てながらセッティングしてください。
Step3:ガットをほどく
購入したガットを袋から取り出し解きます。ロールガットか単品のガットかで長さは違いますが、いずれにしても絡まらないように丁寧に解いてくさい。
また、ガットを固定している針金などをニッパーやハサミで切る場合は、ガットを傷つけないようにしてください。あとは適当な長さになるまで少しずつ解いていきます。
Step4:縦糸を張る
フレームの穴に通しやすいようにガットの先端を斜めにカットします。そうしたらまず縦糸を張るため、センターから通していきます。この時も絡まらないように優しく解きながら通してください。
また必要な分を測るために、ショートサイドで長さを測ります。
Step5:テンションをかける
初めにセンター2本を張るので、こちらにテンションをかけます。テンションをかけたらガット機についているクランプの爪で硬さを調整します。締め過ぎず緩すぎず調整し滑り止めで固定してあげるとテンションが緩みにくくなります。
あとは固定したガットが爪から落ちないように、また緩まないように手で押さえながらテンションを解除してください。
これが出来たら1本目からテンションを張っていきます。
テンションをかけたら、先ほどと同様にクランプで締め過ぎず緩すぎず調整して止め、次のガットを隣の穴に通して絡まらないようにし、フレームを回転させて次のガットのテンションを張ります。
Step6:ゆるみを取りながら経糸を張る
少し時間をおいて緩みを取ってからクランプを移動させます。このクランプは最初に固定したものではなく、先ほど1本目を固定するときに使ったものです。これでどんどん縦糸を張っていきます。
緩みを取るために大体7秒ほど待つようにしましょう。また引っぱる時は穴に対してストレートに引っ張るとテンションをかけやすくなります。焦らず、テンションがしっかり掛かった状態で縦糸を張るようにしましょう。
Step7:横糸を張る
縦糸を左右1本ずつ通していない状態で横糸に移ります。横糸は上から2番目の穴から張っていきます。
セッティングオウルを使い抵抗を少なくなるようにV字方向に引きながら通していきます。テンションロスが無いように真っ直ぐ引っぱりテンションをかけます。
続いて2番目の穴に通しテンションをかけます。あとは順次穴に通してテンションをかけるという作業を繰り返していきます。セッティングオウルを使用し、緩みを取り真っ直ぐになるように調整をしながら通していきましょう。
これは1本張るごとに必ず行ってください。最後に1本分の穴を残して結びます。ガットを切らないように引っぱりパーネルノットで止めます。
Step8:最後にラケット周りを張る
ショートサイドの1周を通します。仕上げの1周は特に丁寧に張るようにしてください。セッティングオウルで緩みを取り除きながら張っていき、最後はノットテンションで張ってパーネルノットで止めて完成です。
かなり根気がいる作業であり、言葉だけではイメージも沸きにくくなっています。動画も参考に張ってみるのもいいですが、自信が無いようなら店頭でやってもらう方が失敗もないので考慮に入れておいてください。