電子タバコ(VAPE)に害はないの?安全性は?
電子タバコ(VAPE / べイプ)を楽しむうえで、どうしても拭い去れない安全性への不安があるかと思います。電子タバコが危険か否かという議論の前に、そもそも現在の研究では電子タバコに関する情報が少なすぎるため、「見えない恐怖」を払拭するにはもう少し時間がかかります。
とはいえ、これまでの試験で証明されている事実もありますが、多くのメディアやキュレーションサイトによってベイプに対しての誤った解釈の情報が流れてしまっていることも事実です。
ここでは、これらの試験データを徹底的に分析し、ベイプの害や安全性について真実を見出していきたいと思います。
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電子タバコ(VAPE)の害や安全性を徹底調査してみた
最近では日本でも電子タバコ(VAPE / べイプ)が一般的な紙タバコ(以下、紙タバコ)に代わりつつありますが、その中で不安に感じることがいくつかあるかと思います。
「電子タバコは一般的な紙タバコよりも安全!」なんていう謳い文句を出しているサイトもありますが、それは少し違うと思います。だからと言って「電子タバコを吸うのは危険!」と言うのも違うと思います。
現在、ネット上では様々な情報が交錯しており、真実は何なのかがわからないまま闇雲に「電子タバコ(ベイプ)=害」というレッテルを張られるのは少々疑問です。
ここでは、筆者自ら海外の学術論文などを読み漁り、本当はどうなのかということを調査してきましたので、他の不安要素と併せてご紹介させて頂きます。
電子タバコ(VAPE)に対する不安要素は何か?
電子タバコに対する意見としてよく挙げられるのが、紙タバコと比較してどうなのかという点です。ニコチンやタールが入っていないから安全?ホルムアルデヒドが含まれる可能性があるから有害?そんな議論が勃発しています。この点については中盤で詳しく解説します。
その他の不安としては、例えば製造元がハッキリしない格安リキッドであったり、はたまた電気抵抗(Ω)が低いだの電力(W)が強いだの、MOD(バッテリー)の膨張が危険だとか、製品に対する不安要素がいくつかあるかと思います。これらもひとつずつ解説していきます。
紙タバコと電子タバコ(ベイプ)の比較
まず大前提として、電子タバコ(VAPE)を吸っている人と吸っていない人を比較すると、吸っている人の方が健康被害のリスクが大きいのは当然です。ですから、これはいくら議論しても意味はありません(土俵が違う)。重要なのは紙タバコと電子タバコとの比較です。
結論から言うと、紙タバコと比較して電子タバコが安全だと言える確固たる根拠はありません。ただし、紙タバコに含まれる200種類もの有害物質のほとんどが、電子タバコには含まれていないということも事実です。この観点では電子タバコに軍配が上がります。
しかし、これだけでは電子タバコの方が安全とは科学的に言い切れないのです。なぜなら、電子タバコに含まれる有害物質の調査は現在でも研究中であって、しっかりとしたデータが得られていないからです。
これまでの証明でハッキリと言い切れることは、「ニコチンやタール、一酸化炭素を吸いたくないなら電子タバコの方が良い」ということだけです。
ニコチンは有害なのか?
ニコチンは有害物質と言われていますが、果たしてその生理活性(体への影響)にはどんなものがあるのでしょうか?
実際に、ニコチンそのものに発がん性などは認められていないどころか、アルツハイマーや痴呆の改善および抑制に効果的であることが研究で証明されています。
それでもニコチンが有害だと言われてきた最大の理由は、依存性を示すということです。つまり、中枢神経に対して毒性を示すということです。紙タバコが厄介な理由は「ニコチンが、200種類以上もの有害物質を含んだタバコを吸いたくさせてしまう」という点にあるのです。
タールの有害性について
問題の発がん物質についてはこちらのタールが主役です。タールは紙タバコの燃焼によって生じる物質の総称で、いわゆるヤニの正体です。紙タバコのフィルターに茶色くついているのがこのタールです。このタールの中にベンゾピレンやアミン類など数十種類の発がん物質が混入しているのです。
電子タバコ(VAPE)がタールフリーであることは、紙タバコと比較したメリットであると言えます。
一酸化炭素の有害性について
紙タバコの三害の1つでもある一酸化炭素がなぜ体に悪いのかご存知でしょうか?
私たちの身体は、肺から取り込んだ酸素が血流に乗って全身へと供給されています。その際、赤血球内のヘモグロビンと呼ばれるタンパク質が酸素を運んでくれているのです。しかし、一酸化炭素は酸素よりも200倍以上ヘモグロビンと結びつきやすい性質があるため、慢性的な喫煙により全身の細胞が酸欠に陥りがちになってしまいます。
すると、赤血球を増やそうと体が抵抗した結果、血管が詰まり動脈硬化を引き起こすと言われています。
電子タバコには一酸化炭素が含まれないという点は、こちらも紙タバコと比較したメリットであると言えます。
電子タバコ(VAPE)の有害物質について
電子タバコにはタバコの三害(ニコチン、タール、一酸化炭素)が含まれていないことは大きなポイントですが、だからと言ってこちらの方が安全だとは言い切れないのです。その理由は、電子タバコの蒸気にどんな有害物質が潜んでいるかが明らかにされていないからです。
- 【▼スキップメニュー(小項目)】
- ホルムアルデヒドに関する議論
- 発がん性・肺炎のリスクについて
- 製造元不明の粗悪リキッド
- 電子タバコの機械的な安全性
ホルムアルデヒドに関する議論
筆者が最も言及しておきたいのが、このホルムアルデヒドについてです。
最近、多くのメディアやキュレーションサイトによって、「電子タバコ(VAPE)にはホルムアルデヒドが発生するから危険」という記事を見かけます。一方で、個人のブログや商品販売ページでは、「きちんとしたリキッドにはホルムアルデヒドは入っていないと証明されている」と書いてあるところもあります。
海外の文献や国内の研究報告をいくつも読んだ上で意見させて頂くと、どちらも間違いです。何が間違っているかというと、現在の研究結果では断言できる段階ではないということです。
後者に関しては、リキッドにホルムアルデヒドが含まれているかどうかの話ではなく、問題なのはどのくらいの電力(W)でPG/VGを気化させたときにホルムアルデヒドが発生するのかということなので、そもそもリキッドには入っていないのが当然です(粗悪品については別ですが)。
「ベイプの有害性」根拠は何か?
まずよく見かけるのがこんな記事です。
「低電圧(3.3V)ではホルムアルデヒドは発生しないが、高電圧(5.0V)では発生する。」
何を根拠に言っているのか調べてみたところ、こちらの文献のようです(英語)。
Hidden Formaldehyde in E-Cigarette Aerosols
N Engl J Med 2015; 372:392-394 January 22, 2015
R. Paul Jensen et al.
情報をよく吟味する
確かに本文中では5.0Vのみホルムアルデヒドが検出されたと書いてあります。これに某メディアが色を付けて「タバコの何百倍ものホルムアルデヒドが…」なんていう記事を書いてしまうのです。
これだけを信じてしまうのは「レモン100個分のビタミンCがこれ1本で!」といった宣伝に飛びつくようなものです(レモン1個分はわずか20mgです)。
電子タバコのメカニズムから疑問点を洗い出す
この文献でなぜ電子タバコが危険であると断定できないかは、以下の図を使ってご説明します。
電子タバコから出る蒸気は、電圧(V)の2乗を抵抗(Ω)で割った数値=電力(W)で求められます。この電力(ワット数)の大きさで蒸気の量が決まります。
しかしこちらの文献やその他のあらゆる研究結果は、故意かどうかはわかりませんが非常に重要な情報を開示していません。その情報とは、赤で示した抵抗(Ω)の数値です。もちろん電力(W)に関しても開示していません。
つまり、確かに5.0Vでホルムアルデヒドが検出されましたが、果たしてどのくらいの抵抗(Ω)で、最終的にどのくらいの電力(W)で蒸気を出したのかが明確ではありません。同じ5.0Vでも、アトマイザーのコイル(抵抗)が違えば出力される電力と蒸気の量は異なるのです。
このホルムアルデヒドに関する研究については、国立保健医療科学院の生活環境研究部による研究報告(PDF)を見つけましたが、こちらも電圧(V)のみの記載であり抵抗(Ω)や電力(W)は不明です。
仮定して計算してみる
仮に筆者が使っているコイル(抵抗0.15Ω)と同じ抵抗値で研究していたと仮定します。
危険値と言われている5.0Vの電圧と共に、先ほどの【電圧(V)の2乗を抵抗(Ω)で割った数値=電力(W)】の式に当てはめると、【5 x 5 ÷ 0.15】なので、電力は166.7Wとなります。
これは一般的な白熱灯の約1.5倍もの電力であり、そんなハイパワーで吸ったらそもそも大ヤケドします!
もう少し現実的な数値にしましょう。コイル(抵抗0.5Ω)だとすると、【5 x 5 ÷ 0.5】なので、電力は50Wとなります。MODの性能上、一般的なMODは20W-40Wであり、よほどの玄人でもない限り50W以上のMOD(バッテリー)なんて購入しません。
コイル(抵抗1.0Ω)だと電力は25Wになります。一般的な電子タバコ(VAPE)の仕様を考えて、これくらいで試験をしてもらいたいものです。
さらに電子タバコの害を検証してみた(続報・検証結果)
電子タバコ(VAPE)によるホルムアルデヒドの検出実験をこちらのサイト(電子タバコ専門店 BI-SO)で行っていたので、これも検証してみます。
こちらのサイトでは、アトマイザーにInertSep mini AERO DNPH(ジーエルサイエンス社;ホルムアルデヒド等の捕集用機器)を装着して吸入後、採取したホルムアルデヒド等を計測したものです。
試験内容としては、電圧3.3(V)、コイル1.5(Ω)を用いているので、先ほどの【電圧(V)の2乗を抵抗(Ω)で割った数値=電力(W)】の式に当てはめると、【3.3 x 3.3 ÷ 1.5】なので、電力は約7.3(W)となります。
この試験から言えることは、BS-IOのリキッドを7.3(W)で気化させたときにホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドは検出されなかった、ということです。抵抗値(Ω)を記述しているのは非常に親切ですが、7.3(W)でVAPINGする人は果たしているのでしょうか。
ぜひ一般的な電力【電圧3.3(V)、コイル0.5(Ω) = 約21.8(W)】で再試験を行って頂きたいところです。ひとまずは、7.3(W)でのBS-IOのリキッドの吸引については、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドに関する安全性は認められたことになります。
海外での研究結果に対する認識
筆者と同様の意見は海外からも聞こえてきます。
【赤字下線部訳】 残念ながら、研究者たちはアトマイザーの抵抗に関する情報を測定しておらず、少しも情報を提供していません。従って、どれくらいの電力がアトマイザーに供給されているのかは不明です。
The main criticism to this study is that in my opinion it is highly unlikely that a top-coil atomizer like the one used in this study would be used at 4.8 volts.
At a resistance of 2.2 Ohms, that would represent 10.4 watts of energy delivery to the atomizer. I tried 10 watts with an EVIC battery in a Vivi Nova top-coil atomizer (for a clinical study I performed few months ago), and many vapers were unable to use it due to the dry puff phenomenon. Unfortunately, the researchers did not measure and could not provide any information about the resistance of the atomizers, thus it is unknown how much energy was delivered to the atomizer. In my opinion, this is crucial. Moreover, it is very important to examine new-generation (rebuildable or bottom coil) atomizers at similar conditions, since it is more likely for vapers to use such advanced atomizers for high-wattage vaping. I am certain that, due to better liquid resupply to the resistance and wick, the results will be much more favourable.”
Formaldehyde in e cig vapour, are we all just slowly embalming ourselves?
Posted May 13th, 2014 by Totally Wicked & filed under Mr Wicked.
※こちらの記事は、この研究結果に対して言及しています。
Formaldehyde release in e-cigarette vapor The New York Times story explained in detail
Created on Monday, 05 May 2014 05:30
Dr Farsalinos.
結論
電子タバコ(VAPE)でホルムアルデヒドが検出されたことは事実です。ホルムアルデヒドが人体に有害であることも事実です。紙タバコでホルムアルデヒドがあまり検出されないことも事実です。
しかし、せっかくの研究結果なのに肝心の抵抗値がほとんどの試験で書かれていないことにより、我々VAPERが混乱させられるのです。
どのくらいの電力で電子タバコ(VAPE)を吸うと、どの程度ホルムアルデヒドによる影響が人体に及ぶのかはきちんと証明されていません(あともう少しなのに)。
ですので、現時点で電子タバコとホルムアルデヒドの関係について良し悪しを断定することは避けるべきです。しっかりと説得力のある研究結果が出てくれることを期待するばかりです。
電子タバコや紙タバコの発がん性・肺炎のリスク
紙タバコは上述した通り、タールに発がん物質が数十種類含まれていますが、電子タバコ(VAPE)にはタールが含まれていません。この点だけを議論するのであれば、発がん性や肺炎のリスクは比較的低いと言えます。
しかしこれまでの話と同様に、電子タバコの蒸気に含まれる発がん物質はほとんど同定されていないので、現時点では電子タバコの方が安全だとは言い切れないのです。
しかも、1mgの紙タバコと超爆煙の電子タバコとを比べてしまうと、結果が容易に逆転する可能性などもあります。やはり一概には言えないという結論に至るでしょう。
製造元不明の粗悪リキッドがもつ危険性
最近では世界中で様々なリキッドが販売されており、中には個人で作製したものを販売するなど、衛生面や安全性で疑問が残るものもあります。中には有害物質のみならず、薬事法で規制されているニコチンまでもが検出される始末です。
基本的に、無名のメーカーや所在地が明記されていないようなリキッドに手を出すのは危険です。きちんとしたリキッドを買うと少し値段が高くなりますが、安全を買うという意味では安いものです。
電子タバコ(ベイプ)の機械的な安全性への疑問
近年、長く使っているとスマートフォンの電池が膨張したり、機器が破裂したりという問題が出てきています。電子タバコ(VAPE)のMOD(バッテリー)は大丈夫か?という声もありますが、大丈夫か否かは正直わかりません。
ただ言えることは、発売間もない製品はしばらく様子を見て口コミをしっかり見ることが大切です。また、MODに膨張があったり熱を帯びていたり、何か違和感を感じたときはすぐに使用を中止するべきです。
こうした現象に遭遇した際には、インターネット掲示板などで相談あるいは注意喚起してあげてください。VAPER同士で協力し合い、危険を回避する文化を育てていきましょう。
本体の異変について詳細が知りたい場合には、メーカーに直接問い合わせるのが一番です(※弊社PLANはメーカーではありません)。
楽しい電子タバコ(VAPE)ライフを送るために
ここまで読んで頂きありがとうございます。おそらく、すっきり解決したとは言い切れないかもしれません。筆者も同感です。
いろいろな情報や不安が錯綜していますが、一度原点に立ち返ってみてください。なぜ、電子タバコ(VAPE)を吸いたいのか、あるいは吸っているのか、ということに。それはおそらく、紙や電子に限らずタバコを吸うこと、つまりそれらを嗜好品として楽しんでいることだと思います。
筆者は時に命の危険を伴うスポーツを趣味としてやっています。それだけ危険だとしても続けている理由は、やはりそれが好きだからなのです。怪我をしてもしょうがないという気概でやってます。タバコも同じです。吸うより吸わない方が良いに決まってますが、好きだからこそ、そのリスクは自己責任で許容しています。
何が言いたいかというと、タバコは嗜好品なのです。安全か危険かによらず、リスクはすべて自己責任です。しかし、タバコは特に非喫煙者が嫌がるものでもあり、リスクを他人に押し付けるものでもありますから、愛煙家は自己責任とはいえ、周りの迷惑にならないような配慮を忘れてはいけません。
電子タバコのような「見えない恐怖」については、結果がどうあれ人体への影響は早急に証明されるべきだと思います。しかし、こればかりは研究者に委ねるしかありません。
最新の論文が公表され次第、ピントル編集部にて改めて調査し、公平な立場で正しい情報をお伝えします。続報をお待ちください。
現時点(2015年10月)でVAPERに有益な情報は、
- 電子タバコ(VAPE)にはタバコの三害(ニコチン・タール・一酸化炭素)は含まれていない
- BI-SOのリキッドは7.3(W)であればホルムアルデヒドとアセトアルデヒドは検出されない
この2点のみしかないのです。
更なる研究結果により情報が明るみになり、より安心して電子タバコ(VAPE)を楽しめるような時代はそう遠くはありません。