天体望遠鏡専用の架台と三脚の種類と選び方
天体望遠鏡は「鏡筒」と「架台」「三脚」から構成されています。天体観測に興味を持ち天体望遠鏡を購入するとき、鏡筒以外の架台・三脚にこだわる方は少ないのではないでしょうか?
鏡筒の性能によって天体の観え方が異なってくるので、鏡筒にこだわる方が多いと思いますが、架台や三脚がしっかりとしていないときれいな像を観測できない、という事もあります。今回は、架台と三脚について、ご紹介したいと思います。
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天体望遠鏡における架台と三脚の役割
天体望遠鏡は「鏡筒」と「架台」「三脚」で構成されています。天体望遠鏡を購入しようと思っている方で、鏡筒の口径や倍率・レンズにこだわる方は多いと思います。
しかし、架台や三脚に目を向ける方は少ないのではないでしょうか?天体望遠鏡と架台はたいていセットで販売されているので、鏡筒を選ぶと架台も決まる場合が多いのですが、この架台は、実は重要な役割を担っています。
架台の必要性
架台は、天体望遠鏡の鏡筒と三脚を繋ぐパーツです。天体観測は、遠くの天体を高い倍率で観測するため、少し風が吹いただけで架台が揺れると、当然鏡筒も揺れるため像も揺れてしまいます。
そのため、風が吹いてもしっかりと支えることができる架台を選ぶ必要があるのです。
三脚の必要性
三脚は天体観測ならずとも、写真撮影などのシーンで良く見かけるパーツです。架台に接続した天体望遠鏡の鏡筒を地面に立てるために使います。
三脚に関しても同様のことがいえ、「とりあえずあればいいかな」という認識で安価なものを購入すると、天体観測を楽しめないという事になってしまう場合もあります。不安定な三脚では天体を見失いやすく、写真撮影なども行えません。
天体望遠鏡を購入する際には鏡筒だけでなく、架台や三脚の性能も重視して選ぶようにしてください。
天体望遠鏡に使用する架台の種類と選び方
天体望遠鏡とセットで販売されていることが多い架台ですが、大きく分けて「経緯台式」と「赤道儀式」があります。それぞれどのような特徴があるのか、ご紹介します。
経緯台式架台の特徴
経緯台式は、地面に対して水平方向と垂直方向に動きます。架台には、望遠鏡の向いている方向をコントロールするため微動装置がついているんですが、経緯台式では観測前のセッティングをする必要が無い事と、上下左右の単純な操作のため、初心者に向いています。
ただし、経緯台式の架台は、天体を追尾するときに上下方向・左右方向の微動ハンドルを両方とも操作しないといけません。そのため、長時間の観測や天体写真の撮影には不向きとも言えます。
また、この微動装置がついていない架台もあります。天体観測は高倍率でしますが、微動装置がついていないと天体を導入・追尾することが難しくなります。最初は安いもので楽しみたいという方が多いと思いますが、微動装置はついているものを選ぶことが大切です。
おすすめの経緯台式架台:ビクセン(Vixen) / ポルタII 経緯台 三脚付
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上下左右は、全周微動可能です。また、手を放した位置で鏡筒が止まる「フリーストップ式」を採用しているので、見たい方向に向けるだけで観測をすることができる手軽さが特徴です。
もちろん、微動ハンドルも装備されているので、細かい操作も可能です。約5Kgまで搭載可能で、本体の重量は5.7Kgとなっています。付属の三脚は、アルミ製の二段伸縮三脚となっています。取り付け・取り外しはハンドルネジ1本で可能なので、設置も簡単です。
赤道儀式架台の特徴
赤道儀式は、星の日周運動を追いかけるために作られた架台で、地球の自転軸に対して水平方向と垂直方向に動きます。最初に極軸といわれる回転軸が地球の自転軸と並行になるように極軸望遠鏡を使用してセッティング作業が必要です。
赤道儀式には、構造によってドイツ式やフォーク式、ヨーク式、イギリス式、ホースシュー式などたくさんの種類がありますが、日本で最も普及しているのはドイツ式になります。
ドイツ式は、鏡筒とバランスをとるためにバランスウェイトが必要となってくるため、重量が重いものが多くなっています。
赤道儀式は赤緯・赤経と呼ばれる天球の軸に合わせて動くので、使い慣れない方には扱いづらいかもしれませんが、天体を赤経と呼ばれる方向に回転させるだけで追尾することができるので、長時間の天体観測や天体写真の撮影に適しています。
赤道儀式は、積載重量が決まっているので、鏡筒の重量を考慮して購入することが大切です。また、経緯台式に比べると構造が複雑な分価格が高いものが多くなっています。経緯台式と同じくらいの価格帯の赤道儀式も販売されていますが、強度・精度で劣るため、天体写真の撮影をしたいという場合は安い赤道儀式は向いていません。
おすすめの赤道儀式架台:ビクセン(Vixen) / SXP赤道儀 25051-6
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ビクセン社の赤道儀式架台です。SXシリーズの性能をさらに進化させたSXPシリーズです。V-PECを搭載しているので、星の日周運動を追尾する性能が大幅にアップしています。
長時間の天体写真をしたい方にオススメです。パルスモーターによる電動駆動、マイクロステップ駆動が可能で、STAR BOOK TENコントローラーによる自動導入が可能なので、初心者から使いやすくなっています。赤道儀の重量はウエイトを除いて約11Kg で、搭載可能重量は16Kg までとなっています。
天体望遠鏡に使用する三脚の種類と選び方
架台と同じく、天体観測の際に実は重要な役割を持っている三脚についてご紹介します。
天体望遠鏡の三脚は、木製とアルミのものがあります。赤道儀式用のものは、以前は木製のものが多かったんですが、現在はほとんどがアルミ製になっています。アルミ製の三脚は重量が軽いのですが、木製のものと比べると振動が収まりにくいという欠点があります。
三脚を選ぶ際に重要なのは、ねじれに強いかどうかになります。赤道儀式の場合、ねじれに弱いと極軸がずれてしまう、という事もあります。
また、天体観測用なのか天体写真を撮りたいのかという目的によって、どの三脚を選ぶかが変わります。天体写真を撮る際には、重量がおもくなるため強度が強い三脚がオススメです。
ただし、重すぎると野外に運んだりする際に大変ですので、体力を考慮して選ぶことも大切です。
オススメの三脚
オススメの三脚を2点ご紹介したいと思います。
ビクセン(Vixen) / SXG-HAL130
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搭載マウントを選ばない三脚です。架台部の水平支点の位置は、赤道儀に合わせて変更することが可能です。また、三脚取り付け部分のねじれが少なく高い剛性を持っているので、安定して観測を楽しめます。本体重量は5.5Kgとなっていて、持ち運びにも便利です。
ケンコー(Kenko) / スカイエクスプローラー SE-AT用三脚II
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アルミ製の天体望遠鏡用の三脚です。重量が2.58Kg と軽いので、女性でも簡単に持ち運びができます。最大搭載重量が7Kgとなっています。
目的に合わせた天体望遠鏡の架台と三脚の選び方
架台の種類や選び方、三脚の種類や選び方については上述した説明で理解できたと思いますが、結局どれを選んだら良いの?という方のために、簡単に目的に合わせた架台と三脚の選び方についてご紹介しましょう。
架台と三脚を選ぶ際の考え方としては「どこまでを守備範囲とするのか」になります。どちらが高性能かというような選び方はしません。みたい天体に合わせてベストな架台を選び、三脚とのベストな組み合わせを見つけることで目的に合わせた天体望遠鏡を組み立てるのが選び方の基本となります。
星雲や惑星を写真に残したい方
眼視による天体観測では見れないような天体を美しい姿で写真に残したいという方はある程度ハイスペックな、重くて精度の良い赤道儀が必要となります。
おそらく、この目的の方はある程度の出費を覚悟しなければいけません。
眼視で長時間の天体観測がしたい方
じっくりと長時間にわたって天体観測を楽しみたいという場合は赤道儀が必要となります。赤道儀無くしてこのスタイルを楽しもうと思うと大変で仕方ないと思います。
セール品で売られているような赤道儀の場合、構造的に弱い物が多いため、今後も天体観測を続ける、ゆくゆくは写真撮影もしたいという場合はそれなりの物を選んで買いましょう。
大型の天体を眼視でのんびり観測したい方
月や大型惑星などを眼視で気ままに天体観測、つまりライトユーザーな方であれば、経緯台があればかなり快適に天体観測ができます。
予算に余裕があるのであれば赤道儀を導入しても良いですが、だったら大型の鏡筒(天体望遠鏡本体)を購入する方がが良いかもしれません。
手軽に星雲や星団を観測したい方
大掛かりで設定が複雑な天体望遠鏡ではなく、自由気ままに星雲や星団を観測したいという場合は、フリーストップ型の経緯台がオススメです。観測したい対象に向ければピタッと止まる操作性、経緯台としてはちょっと高価ですが、大活躍すること間違いありません。
このフリーストップ型経緯台に、コンパクト目な三脚を組み合わせて使用するのがオススメです。
天体観測以外にも地上観測がしたい方
天体観測以外にも、地上観測もしたいという方であれば赤道儀などのハイスペックな架台や、微動だにしない三脚といったアクセサリーは必要ありません。とりあえず手持ちで初めて、必要に合わせて経緯台を買い足すという選び方で良いと思います。